事業を始めたきっかけを教えてください
事業のきっかけは、親会社であるクジラ(株)の代表・矢野さんとの出会いから。2017年6月15日のSEKAI HOTELオープンから更に1年前のことです。 当時私は語学スクールを経営していて、どうにかしてインバウンドの外貨を稼いでいくビジネスをやりたい思いがあり、一方矢野さんは、社会問題となっている空き家を解決したいと考えていました。 その時に『空き家をリノベーションして客室にし、“町ごとホテル”にすれば面白いんじゃないか?』というアイデアから、この「SEKAI HOTEL構想」が生まれたのです。元々宿泊施設の運営のご経験はあったのですか?
いいえ、全くです(笑)。私も含め、うちのメンバーみんなが経験者ではなかったので、はじめのうちは本当に手探りでしたね。ただ、まだ法律のない時代に民泊をやっていた経験があったため、それを使いながら、少しずつブラッシュアップしていき今のカタチになりました。大阪の空き家問題は実感としてありましたか?
そうですね、実感はありました。元々私は大阪出身で、特にこのホテルがある西九条に関しては、空き家が2割以上というデータが出ていたんです。この数字は大阪市の中でも多く、平均を超えています。西九条を選んだのは、そうした背景からでしょうか?
もちろん空き家が多いこともありますが、それ以上に立地という面が大きいです。最寄り駅である西九条駅は関西空港から直結しており、更に環状線内というのもあり、大阪・梅田エリアやJR以外で心斎橋・なんばエリアへも1本でアクセスできます。そのため西九条は、関西で遊ぶ立地としてはこれ以上無いと思いました。
ホテル名の由来を教えてください
矢野さんは昔、仲間と一緒に登山に行って泊まるなど、どこに行ってもキャンプでテント泊をするような遊びをしていて、どこでも遊んで泊まれるからと、SNSのグループ名を「セカイホテル」としていたそうです。 当時から日本国内に遊べるホテルが少ないと感じていたそうで、遊べるホテルにしたいという想いから、SNSグループの名前がそのままホテル名になりました。 仲間内で作った名前が、今では看板となって西九条で根付いているのは感慨深いものがありますね。主にどんなお客様がいらっしゃいますか?
海外・国内の比率は半々。ほとんどの部屋が1グループで1棟貸し切れることと、西九条がユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行く乗換駅でもあるので、USJに行くファミリー層が多くいらっしゃいます。 現在、完全ドミトリー式の新しい部屋の工事が進行中のため、今後は少人数やお1人様での利用も増えていきそうです。オープンから1年が経ちますが、どんなところに面白さを感じますか?
「SEKAI HOTEL」の特長は、点在する空き家を再活用しながら町全体にホテルとしての機能を持たせる「クラウドホテル」であること。そのため宿泊施設という箱だけの提供ではなく、この西九条の下町感を味わってもらうというコンセプトがあります。
自分たちでは【ordinary(日常)】を提供すると言っていますが、例えば、ホテルのモーニングと同じように、ホテルの前にある喫茶店と提携してモーニングを提供してもらっています。
実はその喫茶店のマスターは全く語学ができないのですが、毎日何十人もの外国人の対応をするのに、英語を勉強するのではなく、スマホの翻訳機能を使って一生懸命コミュニケーションをとっているんです。
そんな姿を目の当たりにすると心が和みますね。実際にゲストの方が喜んでマスターとの写真を海外のSNSにあげているのを見ると、自分たちの【ordinary】が世界に広がっていると実感しますね。
【SEKAIパス】について教えてください
当ホテルがゲストにお渡ししているもので、銭湯が無料で利用できるなど提携店でお得にサービスを受けられるパスです。 照合できるリストを書いてもらい、後からうちがお支払いしにいくというシンプルな仕組みですが、ゲストがそれを持っていれば、気軽に西九条の町の提携店に行ける…本当に町ごとホテルという感じですね。 今は2つの喫茶店と銭湯、たこやき屋さん、BAR、カレー屋さん、居酒屋さんと提携していますが、できるだけ提携店を増やし地域のいいところを見てほしいと思っています。運営において苦労したことはありますか?
苦労話はむちゃくちゃあります。西九条の良いところを伝えたいけれど、「簡易宿所と言いながら民泊やん!」と“民泊”のワードが入ってくるだけでアレルギーを持っている方もおり、そこに伝えていくのが大変でしたね。 近隣の方との話し合いはずっと続いており、今も月1回は住民説明会をしています。もう十数回やっていますが、最初の1~3回目とかは、罵声しか浴びてないような、よくドラマであるような説明会でしたね。回数を重ねて少しずつ打ち解けていき、今ではありがたいことにお茶とかを出して頂くなど、地域の茶話会のようになっています。今後の目標について教えてください。
現在SEKAI HOTELは10棟・12部屋で80人弱の収容人数ですが、今後は200名近くまで収容できるようにしたいですね。
また今夏~秋にかけ、新エリア・東大阪で新たなSEKAI HOTELのオープンが決まっています。西九条は空き家ですが、こちらはシャッター商店街を客室にする構想。
将来的には日本全国にエリアを広げ、5年で10エリアを出したいと計画しています。もちろん関東もありますし、北海道・札幌も候補地に挙がっています。「SEKAI HOTEL」という名前なので、国内だけに留まらず、ゆくゆくは世界にも出していきたいですね。困っているものがあれば空き家問わずやっていきたいです。